OreImo PSP:BKIR 0107A.txt
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# Scene: 桐乃編・妹の親友達が協力してくれないわけがない <0180> 学校が終わってすぐ、俺は桐乃を連れて秋葉原駅に来ていた <01D0> 少し早く着いたせいか、まだ沙織と黒猫の姿はない <02A0> 桐乃「へー、ここが秋葉原なんだ」 <02E0> 桐乃の奴、初めて来た時みてえに辺りを見回してやがる <0330> そういえば、……黒猫と沙織にはじめて会ったのもここだったっけ <0380> おお、なんだかうまくいきそうな予感が…… <03D0> 桐乃「うわあ、あんたみたいな連中がぞろぞろいる~」 <0420> ……全然しねえな <0450> こんなんで、うまくいくんだろうか? <0510> 桐乃「うわっ! あれなんかマジヤバくない? 背負ってるリュックサックもダサい上、なんか棒みたいのが飛び出してるし……」 <05D0> 実際には少数派のオタクスタイルなんだけど、その分、見た目のインパクトはハンパねえんだよな <0640> 京介「ああ、そりゃ俺でもヤバいと……」 <0780> 沙織「きりりん氏! 京介氏! こっちでござる!!」 <07D0> 京介「って沙織ぃ!?」 <08C0> 桐乃「ね、ねぇ……まさか、あんたが言ってた二人組って……?」 <0910> 京介「……ああ、デカイ方が沙織、黒い方が黒猫。おまえの友達だ」 <09F0> 桐乃「うげっ……」 <0A50> まぁ、引くのも無理ないか <0A80> 最初に会った時は、俺も盛大に噴き出したし…… <0C10> 沙織「やぁやぁ、京介氏。今回は大変なことになりましたなぁ?」 <0C60> 黒猫「ええ、もはや災厄の星の下に生まれたとしか思えないわね」 <0CB0> 京介「悪いな、二人とも。わざわざ出向いてもらって」 <0D00> そういえば、沙織の家って結構遠い場所にあったよな <0D50> それなのに、連絡してすぐに会おうって言ってくれたんだから、本当、こいつには頭が上がらねえよ <0DC0> でも……肝心の桐乃がこれじゃ、なぁ? <0E10> 桐乃「……そう、夢……これは悪い夢……」 <0E50> 京介「おい桐乃、いい加減正気に戻れ」 <0EA0> 桐乃「……うぅ」 <0ED0> 桐乃の奴……珍獣を見るような目で沙織と黒猫を見てやがる <0F20> 京介「あ、あのな、沙織……今、桐乃は……」 <0FE0> 沙織「はっはっは、皆まで申さずとも、わかっておりますよ京介氏」 <1040> 京介「沙織……」 <10F0> 沙織「では、まずきりりん氏に自己紹介を。拙者は沙織・バジーナと申すものでござる。はじめまして、の方がよろしいですかな?」 <1200> 沙織「そしてこちらが……」 <12B0> 黒猫「ふ、名乗る必要はないでしょう。既に私の名は聞いているのだから」 <1410> 桐乃「……」 <1430> 京介「そ、そう言うなって、桐乃の事情は沙織から聞いて知ってるだろ?」 <1510> 黒猫「……『兄さん』の言うことならしょうがないわね」 <1570> 桐乃「に・い・さ・ん~?」 <15A0> 京介「こ、こら! てめえ、わざとだろ!」 <1660> 黒猫「私の名は黒猫。二度と忘れぬよう、その《矮小:わいしょう》な《魂魄:こんぱく》に刻むがいいわ」 <16F0> 桐乃「は?」 <1710> うわっ!? 早速、展開された黒猫語で桐乃が不機嫌モードに突入した! <1780> 桐乃「ねえ、あんた。さっきからわけわかんないこと言うのやめてくれる?」 <1860> 黒猫「ふ……口だけは相変わらずなのね」 <1920> 黒猫「なら、あなたもそのカンに触るスイーツ(笑)ファッションを止めてもらえるかしら? 秋葉では場違いもいいところ。ひどく目障りだわ」 <19D0> 桐乃「な、なにそれ!? これは今年流行の──!」 <1A20> なんだ……このやりとりだけ見ると、以前となんも変わらねえな…… <1B00> 沙織「まぁまぁ、お二人とも。こんなところで痴話喧嘩もなんですし、さっそく行きつけのメイド喫茶に行きませぬか」 <1B80> 京介「ほ、ほら、沙織もそう言ってるし、ここは抑えて、な。とっとと店に行こうぜ」 <1BF0> 黒猫「…………」 <1CC0> 桐乃「あたし……行かない……」 <1D10> 京介「お、おい桐乃、おまえ何言い出すんだよ? おまえの記憶を取り戻すために集まってんのに、おまえがいなくちゃ意味がねえだろーが!」 <1DC0> 桐乃「だってメイド喫茶って、そこの女みたいな格好のウェイトレス目当てに、キモオタ連中が集まる場所でしょ?」 <1E40> 桐乃「そんなとこ……行けるわけないじゃん」 <1F00> 沙織「きりりん氏……」 <1FB0> 黒猫「来たくなければ別にいいのよ。行きましょう『兄さん』?」 <2080> 桐乃「勝手にすればぁ? そんなキモオタとなんか歩きたくないし!」 <20F0> 桐乃「ってか、この際、言わせてもらうけど、あんたら自分がどれだけ浮いてるかわかってる?」 <2170> 桐乃「はっきり言って、あたしとあんたたちが友達なんて信じらんないんだよね。悪い冗談でしょ?」 <2200> 京介「──っ!?」 <2250> お、おい……ちょっと今のはシャレになってねえぞ <22A0> 沙織はあからさまにしょぼくれたし、黒猫はうっすらと目を潤ませてんじゃねえか <2330> お、おい……ちょっと今のはシャレになってねえぞ <2380> 京介「おい、桐乃止めろって。今日は二人ともおまえのために来てくれたんだぞ」 <23F0> 桐乃「別にあたしが頼んだ訳じゃないし。つーかさぁ、こんな連中なら事前に言っておいてくれてもよくない?」 <2470> チッ……こいつ、ひょっとしてまだ意地張ってんのかよ? <24C0> と、とにかくフォローいれねえと、このままじゃマズい! <2510> 京介「あ、あのな、沙織。桐乃は今……」 <25F0> 沙織「……わかっておりますよ、京介氏」 <2630> 京介「わかっているって……何を?」 <2670> な、なんだ? 今の妙な目配せは……つか、な、なんで二人して笑ってんだ? <26E0> 桐乃「な、なにがおかしいの?」 <27A0> 黒猫「おかしい? そうね、おかしいというならあなたの全てが滑稽だわ」 <2880> 桐乃「……は?」 <2930> 黒猫「あなた記憶喪失ですって? 嘘をつくならもう少しましな嘘をつきなさい」 <2A10> 黒猫「意味もなく手首に包帯を巻く子どもと同じね。誰かに特別だと思われたい、心配してもらいたい。だから自分で勝手に設定をつけたのでしょう?」 <2B30> 沙織「はっは、立派な厨二病ですな」 <2BF0> 桐乃「何言ってんのよ! あたしは本当に……」 <2C40> 沙織「恥じることはありませんぞ、きりりん氏。それは誰もがかかる、はしかのようなものでござる」 <2D30> 黒猫「そう私にはあなたの気持ちが手に取るようにわかる。『誰か』じゃだめなのよね?」 <2E20> 黒猫「あなたが振り向いて欲しいのは一人だけ……愛してやまないお兄さんなのでしょう?」 <2F10> 桐乃「な……な……!?」 <2F60> おお、おおおお!? 俺はこの気配を知っているぞ <3080> 地震、雷、火事、妹、何か大変なことが起きる前にはこうして全てが止まり、そして…… <31E0> 桐乃「だ、だだだだ誰がこんなやつ愛してるもんかっ! この邪気眼厨二病女がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 <32A0> 京介「お、おおお、抑えろ桐乃ぉぉぉぉっ!!」 <32F0> 桐乃「放せ! こいつ殺してやる!!」 <3330> 京介「こ、こら、駅前で物騒なこと言うんじゃねえ! こ、こら、暴れんな! 肘で俺をど突くな!」 <3450> 桐乃「さっきから聞いてれば、誰が厨二病よ! 誰が子どもよ!」 <34B0> 桐乃「全部あんたのことじゃない! 邪気眼まるだしの自己マン小説しか書けないクソワナビのくせに!」 <3530> お、おまえ……黒猫の地雷をことごとく踏み散らかしやがったな <3580> いくら自分の小説が本になったからってそれはあんまり── <35D0> 京介「──って、オイ。おまえ、何で黒猫が小説家志望だって知ってんだよ?」 <3640> 桐乃「え? って、あ──」 <3670> 確かに俺は黒猫が書いている小説を桐乃に見せた。だがプロか同人か、までは説明していない <36E0> 教えたとしてもオタク知識のない桐乃には理解できなかっただろう <3730> 京介「ってことは……」 <37E0> 桐乃「あ、あたし……記憶が……戻ってる……?」 <3830> 京介「や、ややや……」 <3860> 京介「いやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 <3910> 桐乃「ちょ、頭抱えんな! ああもう放してってば!」 <3A20> 黒猫「あら? 本当に記憶喪失だったの? てっきりはしかに掛かったのかと思ったわ」 <3B10> 黒猫「記憶喪失なんて、いかにも思慮の足りない人間風情が考えつきそうな設定だもの」 <3C00> 桐乃「だ、だから、あんたの邪気眼と一緒にすんなっつーの!」 <3CB0> ぎゃんぎゃんと、桐乃と黒猫が痴話喧嘩をはじめる <3D00> それは、まったくもっていつもの光景で、あまりに久しぶりなもんでつい…… <3DC0> 沙織「おや、京介氏? 泣いておられるのですかな?」 <3E10> 京介「う、うるせえ!」 <3E40> 溜まった疲労とストレスが目から出てんだよ! <3E80> ちくしょう、沙織の奴……まるでお見通しみたいにニヤニヤしやがって…… <3EE0> ん……お見通し? <3F10> 京介「……ひょっとしてお前ら、桐乃を怒らせるためにわざと芝居を……?」 <3FF0> 沙織「はて、拙者にはなんのことやら──」 <4030> 口元《をεに: こんなふう 》して、口笛吹くんじゃねえぞタコ助 <4200> 京介「おい、それマジで言ってんのかよ?」 <42A0> 桐乃「だ、だったらどうだって言うわけ!」 <42F0> 京介「……」 <4310> 京介「……そんなこと言うやつは本物の桐乃じゃねえ」 <43E0> 桐乃「は? 本物のあたしって何?」 <4420> ああ、わかってる。今の桐乃にとって、この言葉は自分を否定するNGワード <4480> それでも、俺は言わずにはいられねえ <44C0> 京介「俺の妹はナマイキですげえむかつく性格で、人のこと平気で死ねとか言う奴だけど──」 <4530> 京介「──それでも友達を傷つけるような奴じゃなかった」 <45A0> 桐乃「……っ!?」 <45D0> 京介「だから……今のお前は俺の妹じゃねえ。親父やお袋が認めたって、俺が認めねえ」 <4640> 感情の赴くままに怒鳴りつける <46F0> 桐乃は青ざめた顔のまま、時が止まったように動かねえ <4740> ふん、もう俺の知ったこっちゃねえよ <4780> 京介「──黒猫、沙織。今日は付き合わせて悪かったな。メイド喫茶は俺がおごるわ」 <47F0> 沙織「京介氏……」 <4820> 黒猫「それでいいのかしら?」 <4850> 京介「……いいんだ、行こう」 <4910> 二人は当惑した様子て桐乃と俺を交互に見ていたが、やがて俺の後ろを歩きはじめた <49D0> 視界の端に、一瞬、うつむいた桐乃が映る。だが、俺は足を止める気はなかった <4A30> ──結局、桐乃は、メイド喫茶に来ることはなかった <4B30> 京介「それが今の……新しい自分とやらの本音なのか?」 <4C00> 桐乃「わ、悪い?」 <4CC0> くそ、これじゃ三日前とまったく同じじゃねえか <4D00> 要するに、素直じゃない性格が災いして、引っ込みがつかなくなってるんだろ? <4D60> たくっ、どうするよ? <4D90> なんとかして、今の言葉が本心じゃないってこと二人に伝えねえと <4EB0> 黒猫「……悪いに決まってるでしょう。人のことを何だと思っているの?」 <4F10> 京介「黒猫!?」 <4FC0> 桐乃「何って、キモいオタクだと思ってるって言ってんじゃない」 <5090> 黒猫「キモい……ね。なら、どこがどう『キモい』のか客観的な意見をもらえるかしら?」 <5110> 桐乃「は、はぁ? あんた何言ってんの? あたしがキモいと思ったからキモいって言っただけだし!」 <5210> 黒猫「なるほど、自分の美意識に外れるものを『キモい』と定義するの。いかにも頭の軽い厨房らしい意見ね」 <5310> 桐乃「んなっ!?」 <53C0> 黒猫「その定義で言わせてもらうなら、私から見ればあなたの格好も『キモい』わ。さっさと脱ぐなり目の前から消えてくれない?」 <54D0> 桐乃「あ……あんたこそ、その暑苦しい黒服を今すぐ脱げば!? 見てるだけで暑くて死にそうだっつーの!」 <55D0> 黒猫「ふ、最初に会った時と同じことを言うのね。もしかしてボキャブラリーだけでなく、思考まで貧困なのかしら」 <5660> 桐乃「ぐぬのぬぬねながぐぅぅぅ~」 <56A0> おおお、さすが黒猫。この一年で桐乃の揚げ足の取り方を研究してやがる <5790> 黒猫「……でも私、そんなあなたのことも嫌いじゃないわよ」 <57F0> 桐乃「……え……」 <58B0> 黒猫「あなたとケンカするのもなかなか刺激があるし、何よりあなたのブチ切れた顔を見るのはとても愉快だわ」 <5930> 桐乃「な……な……」 <5960> 京介「黒猫……おまえ……」 <59A0> 黒猫「記憶を失っても本質は変わっていないようだし……いいわ。あなたのことを認めてあげる」 <5C10> 沙織「……そうでござるな。拙者もお二人の言い合いを見ていてわかりました」 <5CF0> 黒猫「オタクが認められないあなただって、あなた。あなたは今、自分という殻を破っ《て変身し:メタモルフォーゼ》ただけ……」 <5E00> 沙織「きりりん氏自体は何も変わっておりません。拙者たちの友達でござるよ」 <5E70> 桐乃「あんたたち……」 <5F20> 桐乃「チッ……オタクに認められてもうれしくないっつーの」 <5F70> 桐乃……おまえ、相変わらずにやけるのを隠すのがヘタだなぁ <5FC0> でも……そうだな。オタク趣味を忘れたって桐乃は桐乃。俺の妹なんだ