OreImo PSP:MGIM 0000.txt
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# Scene: if・兄と妹の事情編 <01B0> 深く深呼吸して、まずは桐乃が隠していた魔空間をまじまじと見る <0200> DVDやらフィギュア、ゲームのパッケージに薄い冊子と、絵に描いたようなオタクグッズがてんこもりだ <0280> 京介「ん……なんだ、こりゃ?」 <02C0> 京介「随分古いけど……アルバム、か?」 <0300> 大量のオタクグッズの中、隠すように置いてあった一冊のアルバムを手に取る <0360> 他が美少女のアニメイラストだったりすると、こういうのって余計に目立つんだよな <03C0> ……なんでこんなところにアルバムが? <0400> さては桐乃のやつ、小さい頃の恥ずかしい写真を隠そうとして、こんなところに………… <0470> 京介「くっくっくっ……」 <04A0> 容姿、頭脳共に完璧な妹サマと言えども、小さな子供のころなら…… <0500> おもらししてビービー泣いてる写真とか、あったりしちゃうんじゃねえの? <0560> 京介「へっへっへ……」 <0590> 京介「高坂桐乃の弱味、握ったり!」 <05E0> …………一応、言っておく <0610> 俺はクソ生意気な妹の弱味を知りたいだけであって、決して『おもらししちゃった桐乃』が見たいわけじゃねーぞ? <0690> 良い子のみんなは、そこんとこ間違わないように! <06F0> 京介「お次は……」 <0730> 京介「……なかなかねえな」 <0770> 京介「…………」 <07B0> なんか、あれだ…… <07E0> 妹の成長する姿をアルバムで見るっつーのは、いろいろと感慨深いもんがあるんだな…… <0850> 運動会で泣いてる桐乃……。旅行に行って、疲れて寝てる桐乃……。親父とお袋と一緒にピースしてる桐乃 <08D0> 写真の中の桐乃は、今とちっとも変らない様子でくるくると表情を変えていた <0930> 認めるの《は癪だ: しゃく 》が……。小さい頃の桐乃はすげえ可愛いと思う。これ、マジ <09A0> 兄バカと言われようが、そう思うんだから仕方ない <09F0> いやいや、子供ってみんなそういうもんよ? 特に自分の身内ってなると、贔屓目で見ちゃうんだわ <0A60> 京介「どうしてこのまま、成長してくれなかったのかねー」 <0AB0> 無邪気に微笑む我が妹に、自然と溜め息が零れる <0AF0> 今のあいつを否定するわけじゃねーけど、もうちょっとさぁ……兄貴として敬って欲しいっつーか <0B60> せめて人を他人扱いしたり、身内とも思わない目つきで睨むのはやめて欲しい <0BC0> 京介「…………それにしても」 <0C00> ページを捲れども、捲れども── <0C50> 京介「このアルバム……、見事に親父とお袋、桐乃しか写ってねえな」 <0CB0> そう、このアルバム。ものの見事に俺という存在が完全無視されていた <0D10> 最初から最後まで桐乃。ところにより親父とお袋 <0D50> 息子兼、桐乃の兄の俺が写っているものは、一枚たりとも見つからなかった <0DB0> まるで意図的に抜き取られたように── <0DF0> 京介「ま、まあ、親父たちは桐乃贔屓だし!? 俺の写真が無くたってそんなこと……」 <0E60> 京介「別にそんなこと……。寂しいとか思ったり、しねえよ」 <0EC0> でも、こうして見てると…… <0EF0> どれもこれも、俺の記憶に無い写真ばっかだしなぁ…… <0F40> この旅行とかいつ行ったんだっけ? 全然思い出せねーけど…… <0F90> 京介「……………………」 <0FC0> 京介「あー、こうやって悩むのは性に合わん!」 <1000> 京介「……明日にでも、直接お袋に訊いてみっか」 <1050> 桐乃がこのアルバムを持ってたのは、自分しか写ってないからだろうし…… <10B0> きっとこのアルバムとは別に、『京介専用アルバム』が出てくるに違いねえ <1220> それから、電話を終えた桐乃が戻って来たものの── <1270> なぜかあいつは『今日はやっぱいい』と、自ら人生相談とやらを撤回した <12D0> 結局、桐乃が俺に何を伝えようとしたのかは、わからないまま終わった <1430> そして、翌朝── <14F0> 京介「なあ、お袋。ちょっと訊きたいことがあるんだけど……サ」 <1540> 京介「俺の小さい頃の写真とかってねえの?」 <1600> 佳乃「なーに? 《藪:やぶ》から棒に」 <1640> 京介「別に大したことじゃないんだけど、気になったから訊いただけ」 <16B0> 佳乃「京介の写真は無いわよ」 <16E0> 京介「え、無いの? 一枚も?」 <1730> 佳乃「だってあんた、写真撮られたがらなかったじゃないの」 <1780> 京介「…………そうだっけ?」 <17C0> 佳乃「そうよー。カメラ向けると、いっつも逃げ出しちゃって!」 <1810> 京介「うーん?」 <1840> 言われてみりゃそうだったような気も……? <1880> ……ダメだ。さっぱり覚えてねーや <18D0> 佳乃「その点、桐乃は写りたがりだったから、いっぱい写真が残ってるけど──」 <1940> 佳乃「今になって考えてみると、モデルの素質があったってことなのかもねー」 <19A0> 京介「へーへー、親バカ親バカ」 <1AB0> お袋じゃ駄目だな。もっと真剣に話聞いてくれそうな…… <1B00> ……まあ、一人しか選択肢はないんですケド <1C30> 京介「なあ、親父。俺の小さい頃ってどんなんだった?」 <1C90> 大介「何故、今それを訊くんだ?」 <1CD0> 京介「気になったから」 <1D10> 大介「至って普通の子供だ。ごくごく平凡で当たり障りの無い子だった」 <1D70> 京介「へー……」 <1DA0> さっぱりわからん <1DD0> 京介「そうじゃなくて『よく笑う子だった』とか、『頭の回転が速い子』みたいなんはないの?」 <1E50> 大介「無い」 <1EA0> 即答!? さすがに心折れそう!! <1EE0> 京介「あのさ、俺なんでか子供の頃のこと、よく覚えてなくて……」 <1F40> 京介「真面目にどういう感じだったのか、知りたいんだよね」 <1FB0> 大介「…………そうか」 <1FE0> 京介「『そうか』って、それだけ?」 <2030> 大介「気になるのか?」 <2060> 京介「気になるから知りたいんじゃねえか」 <20B0> なんだ? この、のれんに腕押し感 <20F0> まるで俺の出生の秘密を隠そうとしてるような…… <2140> ──って、なに言ってんだよ、俺! 出生の秘密とか、二次元かぶれしすぎだろ!? <21A0> 俺はごくごく普通の男子校生だ。……そうだろ、高坂京介? <21F0> 大介「…………ふぅ」 <2230> 大介「どちらにせよ、いつかは言おうと思っていたところだ」 <2280> 京介「……何の話だ?」 <22C0> 大介「おまえの話だ、京介。自分のことが訊きたいんだろう?」 <2310> 京介「あ、ああ……」 <2340> 大介「おまえは──」 <23D0> 親父から語られた話は、にわかに信じ難いものだった── <2420> 京介「それじゃ、俺は親父とお袋の本当の子供じゃねえのか?」 <2520> 大介「…………そうだ」 <2550> 大介「おまえは母さんの兄弟方の子供だ」 <2590> 金づちで頭を殴られたような衝撃が全身を襲った <25D0> 大介「──だが、訳あってうちで預かることになった」 <2620> 京介「なるほど、ね……」 <2650> 京介「それが俺の小さい頃の記憶が曖昧な理由?」 <26B0> 大介「……今日はここまでにしよう。いっぺんに知る必要は無い」 <2730> そう言って親父は、俺から顔を逸らした <2770> 正直、助かったと思ったよ <27A0> 『おまえはうちの子供じゃありません!』って、急に言われても現実感ねえし? <2800> 色々事情があるんだろーけど、今説明されたところで理解できる自信もねえ <2940> 佳乃「あなた……。京介に話したの?」 <2980> 大介「そろそろ頃合いだと思ったんだ」 <29C0> 佳乃「そう……」 <2A00> 佳乃「ねえ、京介。聞いてもらえる?」 <2A50> 佳乃「確かにあんたは実の子じゃない。だけど──」 <2AB0> 京介「言わなくてもわかってるよ」 <2AF0> 京介「お袋も親父も、俺を本当の子供だと思ってくれてる。………………そうなんだろ?」 <2B70> 佳乃「京介……」 <2BA0> 京介「そりゃ、ショックだよ? いきなりこの家の子じゃねえとか言われたらさ」 <2C00> 京介「今だって状況に整理ついてねえよ。ひょっとしたら夢なのかもって思ってる」 <2C60> 京介「それでも、二人が今まで俺を育ててくれたことには、なんの変わりもねーから……」 <2CD0> 京介「今日まで育ててもらったこと、すげえ感謝してる」 <2D30> 大介「……バカ息子が。『今日まで』じゃないだろう」 <2DA0> 大介「『これからもずっと』、おまえは俺たちの手の掛かる息子だ」 <2E00> 京介「…………おう!」 <2F40> まだすべてを理解して受け入れたわけじゃねえ <2F80> それでも俺にとっての親父とお袋は、この二人しかいないんだよね <2FD0> これがもっと小さい頃だったら、もうちょっと混乱してたかもしんねーけどさ <3030> 今の俺は、こう思う <3060> 今が幸せなら、それでいいやって! <31A0> ──とは、思ったものの…… <31F0> 京介「あっちー……。麦茶麦茶っと……」 <3260> 京介「んっ、んっ、んっ……」 <3290> 京介「ぷはぁ……! やっぱ夏はこれだぜぇ……!」 <3360> 京介「あ……」 <3390> 桐乃「……なに?」 <33C0> 京介「いや、なんでもねえ」 <3400> 桐乃「あっそ。じゃ、死ねば?」 <3440> 京介「なんでだよ!? すること無かったら死ななきゃいけないの俺!?」 <34B0> 桐乃「自分に生きる価値があるとでも思ってるワケ?」 <3500> 京介「あー、はいはい。俺がココにいんのが悪いんだろ? ったく……!」 <3710> 京介「はああぁぁぁぁ……!」 <3740> 京介「いっずれええええぇぇぇぇ!」 <3780> 桐乃の毒舌はいつものことだ。今更部屋にのこのこ引き下がるようなもんじゃねえ <37E0> それでも桐乃と二人っきりの空間が窮屈に思え、最近は出来る限り顔を合わさず済むよう、部屋に引きこもってたりする <3860> いや、なにを迷うことがある? いつも通り、いつも通りにしてりゃいいんだ! <38C0> 桐乃は俺のこと、一応兄貴だって思ってるんだし! <39E0> 桐乃「あっそ。じゃ、死ねば?」 <3AD0> …………いや、思ってねえかも <3B00> だとしても、だ <3B30> たとえ兄貴扱いされなかろうが、血が繋がってなかろうが、あのクソナマイキ中学生は俺の妹 <3BA0> 今まで通りに接してりゃ、なーんの問題もありゃしねえ <3BF0> ……頭ではわかってるんだ、コレが <3C30> でも、突き詰めればあいつと俺の関係は、同じ家に住む赤の他人同士 <3CA0> 京介「はぁ……」 <3CD0> 一度考えてしまったことは、なかなか頭から離れずこびりついたままになった <3EE0> 京介「は、はよ……」 <3F10> 桐乃「…………フン」 <3F40> 京介「…………はぁ」 <3F70> 今日も今日とて、俺と桐乃のやりとりはぎこちない <3FC0> まあ、元から桐乃から俺への態度は、毛虫に接するようなもんだったし? 今までと大差ないって言やそれまでなんだけどよ <4050> なんつーか……。今までとは違って俺の方が意識しちゃうんだよね <4120> ちらりと横目で見る <4150> 桐乃は椅子の上で足を組み、白い太腿を惜しげもなく晒すような格好をしていた <41B0> この間までは、どうってことない日常風景だったものだ <4200> しかし、見方一つが変わるだけでそれは、大変目のやり場に困るものになってるわけで <4270> 赤の他人の太腿なんて見てられっかよ…… <42B0> 京介「なあ、桐乃。おまえのその格好……」 <42F0> 京介「ちょっと刺激が強いって言うか、その……」 <43C0> 桐乃「はぁ?」 <43F0> 桐乃「こんなの、今までだってしてたじゃん」 <4430> 京介「そう……だけどさ。あー、もういいや。わり……」 <44B0> これ以上、桐乃と話してもムダだ。俺が部屋に退散しちまえばいいことだし…… <4570> 桐乃「なんなのあんた。いきなりキモいんですけど?」 <45C0> 京介「ッ、るせー!」 <4740> 桐乃「……なんなの、ホント」 <47F0> 桐乃「…………死ねばいいのに」 <49B0> 京介「んー……もうこんな時間か」 <49F0> 京介「そろそろ風呂にでも行くか……」 <4B50> 京介「あー、ったく。毎日あっちーなぁ……っと!」 <4BB0> 桐乃「……!?」 <4BE0> 京介「きっ、桐乃ぉ!?」 <4C10> 京介「こ、これは違うんだ! 偶然……そう、偶然の産物!」 <4C60> 桐乃「へえ……」 <4C90> この、凄まじい無言の圧力…… <4CC0> ……もうおしまいだ…… <4D00> 桐乃「……いい」 <4D30> 京介「あ……?」 <4D60> 桐乃「べ、別に怒ってないから……」 <4DA0> 桐乃「今度から、気をつけて」 <4DD0> 京介「あ、ああ……。悪かった、次からは確認する……」 <4F70> な、なんだよ桐乃のやつ……。あんな女の子らしい反応しやがって…… <4FD0> いつもなら《罵詈雑言:ばりぞうごん》に加え、容赦無い右フックが飛んでもいい場面だったのに…… <5040> なんで俺もあいつもぎこちなくなってんだよ!? <5080> あー、くそっ! もうよくわかんねえ……! <51A0> 京介「……………………」 <51D0> 京介「あのー……」 <5200> 京介「つかぬことをお伺いしますが──」 <5240> 京介「なんで俺、おまえの部屋に呼ばれたの?」 <5360> 京介「もしかして、また人生相談ってやつ?」 <53A0> 桐乃「…………」 <53D0> 京介「なあ、黙ってないでなんか言えって」 <5430> 桐乃「あんた、最近おかしくない?」 <5470> おかしいよ。わけは言えねぇけどな <54B0> でも、今日のおまえも……なんだかおかしいぞ <54F0> 桐乃「絶対なんか隠してるでしょ。なに? 早く言って」 <5540> 京介「なんも隠してねーよ」 <5580> 桐乃「うそ」 <55A0> 京介「ウソじゃねえって」 <55E0> 桐乃「じゃあ、最近のあんたの態度……あれなに?」 <5630> 桐乃「あんた……あたしのこと避けてるでしょ」 <5670> 京介「い、いつものことだろ。妹のわがままに巻き込まれないよう、警戒してるんだよ」 <5760> 桐乃「違う」 <5780> 京介「な、なにが」 <5830> 桐乃「……うまく言えないけど、違うの!」 <5870> 京介「どう違うってんだよ?」 <5920> 桐乃「だ、だから……だから……」 <5970> 桐乃「よそよそしいっていうか……他人みたいっていうか……」 <59C0> 京介「それは……」 <5A70> 桐乃「なに!? 理由があんなら早く言ってよ! このままじゃ気持ち悪いの!」 <5AD0> 京介「………………」 <5B10> まあ……こいつには言っても平気か <5B50> どうせいつか知られるんだし…… <5BA0> 京介「実は俺さ、おまえの本当の兄貴じゃねーんだわ」 <5C70> 京介「おまえは親父とお袋の子供だけど、俺はお袋の兄弟の子供なんだと」 <5CD0> 京介「だから血は繋がってねーし、ぶっちゃけ……その……赤の他人みたいな?」 <5DB0> 桐乃「ふーん、そうなんだ?」 <5DE0> リアクションうっす!!!! <5E10> 京介「ここはもっと驚くところじゃねーの? 俺、おまえの兄ちゃんじゃないんだよ?」 <5E90> 桐乃「なんとなく……そんな気がしてたから」 <5ED0> 京介「……気付いてたのか?」 <5F00> 桐乃「昔のアルバムにあんたの写真だけなかったし」 <5F50> 京介「あー……」 <5F80> 京介「ひょっとしておまえ、それで昔のアルバム隠してたの?」 <6050> 桐乃「隠して……?」 <6090> 桐乃「……もしかしてあんた。あたしのコレクション漁った?」 <60E0> 京介「は……!? ち、ちが……! これには深い理由が……!」 <6130> 京介「決して桐乃の弱味を探ろうとしたとか、やましいことは一切思ってませんから!」 <61B0> 桐乃「……もういい」 <61E0> 京介「へ……?」 <6290> 桐乃「もういいって言ってんの。どっか行って!」 <62E0> 京介「あ、ああ……」 <6320> 気のせいかもしれないが── <6350> 俯く桐乃の顔は、寂しそうに見えた <6390> 京介「なあ、桐乃」 <6440> 桐乃「うるさい。もうなんも喋んな」 <6480> こいつ <64A0> もしかしてアルバムを隠してたのも、俺がショックを受けると思ったからだったり? <6500> …………まさか、なあ…… <6540> 桐乃「なにじろじろ見てんの?」 <6580> 京介「あのさ……一つだけ言いたいことがあって」 <6650> 桐乃「なら、早く言えば?」 <6680> 京介「血なんか繋がってなくたって、おまえは俺の妹だよ」 <6750> そう言って俺は、なんとなく桐乃の頭に手を伸ばした <67A0> こうすればまた前みたいに、仲が悪いながらも兄妹らしい関係に戻れる気がした <6810> 桐乃「…………っ」 <6840> 京介「わ、悪い……」 <6870> ──駄目だった <68A0> 桐乃の驚いた顔を見たら、到底触れることなんてできなかった <68F0> 京介「……じゃ、おやすみ」 <6AE0> 桐乃「…………」 <6B20> 桐乃「…………バカ」 <6BD0> 桐乃「──ってなに言ってんのあたし!?」 <6C90> 桐乃「あー……うー……!!」 <6CD0> 桐乃「ほんっと……いなくなっちゃえばいいのに……!」 <6EA0> 京介「……………………」 <6EE0> 京介「ン……んん……」 <6F20> ったく、誰だよこんな時間に…… <6F60> 夜中の1時……。起こす時間にしちゃ早すぎるっつーの <6FB0> 京介「お袋か?」 <6FE0> 桐乃「……あたし」 <7010> 京介「…………桐乃?」 <7040> なんで桐乃がこんな時間に……? <7080> 意味わかんねえ。けど、わざわざ起こすってことは何かあったんだろうな <70E0> ともかく、話を聞いてみっか <7110> 京介「待ってろ、今開ける」 <7140> 元から鍵掛かんない部屋なんだけど……ね <7310> 京介「どうした? こんな夜遅くに……」 <7360> 桐乃「…………べつに」 <7390> 京介「『べつに』って……おまえなぁ」 <73D0> まさか桐乃ともあろう者が、『怖い夢見たから眠れないの~!』とは、言い出さないとは思うが…… <7450> 桐乃「……あんたが変なこと言うから悪い」 <7490> 京介「…………は?」 <74C0> 京介「いきなり何言ってんの、おまえ。寝ぼけてんなら自分のベッドで寝ろ」 <75A0> 桐乃「うるさい! あんたが、あんたが全部悪い!」 <75F0> 桐乃「本当の兄妹じゃないとか、血繋がってないとか……!」 <7650> 桐乃「そんなの聞いたら、あ……あんたがどっかに行っちゃうんじゃないかって……」 <76C0> 京介「心配……してくれたのか?」 <7780> 桐乃「…………一応」 <77B0> し、信じらんねえ……。あの桐乃が俺のこと、心配だぁ!? <7800> 桐乃「あたしがあんたの心配しちゃ悪い?」 <7840> 京介「わ、悪いとは言ってねえだろ?」 <7890> 桐乃「あんたがいなくなったら……」 <78E0> 桐乃「これからは誰があたしのために、アキバの深夜販売に並んで新作ゲームを買ってくるわけ?」 <7950> 桐乃「誰があたしをコミケに連れてってくれるわけ?」 <79A0> 京介「…………それ、俺がやんの?」 <7A60> 桐乃「うっさい!」 <7A90> 京介「くっ」 <7AB0> 何か言い返してやろうと思ったが <7B00> 桐乃「それでも、心配したの」 <7B30> こんな顔されたら、怒れるわけがない <7B70> 京介「俺は……どこにも行かねーよ」 <7C30> 桐乃「そんなのわかんないじゃん。本当の親捜しに、勝手に出て行くとかするかも……」 <7CA0> 京介「……アニメや漫画の見過ぎだ」 <7CF0> 桐乃「だって、あたしだったら絶対気になるもん」 <7D40> 京介「おまえと俺は違う。落ち着けって」 <7E00> 桐乃「あたしは落ち着いてる……!」 <7E40> なんつー声出すんだよ、おまえ…… <7E80> どうやら桐乃はマジだ。真面目に俺がどっか行っちまうんじゃねえかって、ありえねえ妄想に取り憑かれちまってる <7F80> 桐乃「ねえ、どこにも行かないって言うなら……」 <7FE0> 桐乃「今日だけ……。今日だけ、一緒に寝て」 <8020> 京介「えっとぉ……」 <8050> 京介「どういうことですか?」 <8100> 桐乃「っ、信じらんない! 今のを二度言わせる気!?」 <8160> 桐乃「一緒に寝てって言ってんの! つーか寝ろ! 拒否権とか無いから!」 <81C0> 京介「なんで頼みごとしながらキレてんだよ!」 <8200> 桐乃「ぐだぐだ言い訳すんな! たかが一緒に寝るだけじゃん!?」 <8260> 京介「だーかーらー! いきなり一緒に寝ろか言われても意味わかんね──」 <82C0> ──って、一緒に寝ろだぁ? <8370> 桐乃「そ。一緒のベッドに入って、ぎゅってして寝るだけの簡単なお仕事」 <8510> 顔を真っ赤にした桐乃が、そっと寄り添ってくる <8560> えっと……。なんですか、この生き物……? <85A0> 肩とか震えてるし、めっちゃ緊張してんだな…… <85E0> …………可愛い <8610> ──って、落ち着け俺! 桐乃は俺の妹だぞ! 兄を顎でコキつかうエキスパートだぞ!? <8680> 京介「俺の妹がこんなに可愛いわけが──」 <86C0> 桐乃「べ、別にいいじゃん」 <86F0> 京介「あのな! 俺だって一応男だし……その……」 <87A0> 桐乃「……返事」 <87D0> 京介「え?」 <87F0> 桐乃「返事は? いいの? 悪いの?」 <8830> 京介「……おまえはいいのか?」 <8870> 桐乃「今更、なに言ってんの?」 <88B0> 桐乃「あの、さ」 <88E0> 桐乃「あんたのこと、これからは……京介って、呼ぶから」 <8930> 桐乃「もう、兄妹じゃ……ないんでしょ?」 <8C30> ──後日 <8CC0> 桐乃「ねえ、少しだけあたしの話……聞いてくれる?」 <8D10> 京介「なんだよ、改まって」 <8D40> 桐乃「いっ、いいから! …………黙って聞いて」 <8D90> 桐乃「あたしたちってこういう関係になるまで、家の中でも話すこと……無かったでしょ?」 <8E00> こういう関係になるまで話すこと……。ああ、桐乃のオタク趣味を知るまで……ってことか <8E70> 桐乃「メルルのDVDがあたしのってバレたとき、もうダメだと思った」 <8ED0> 桐乃「絶対バカにされるし、気持ち悪いって嫌われると思った……」 <8F30> 桐乃「でも、違った。軽蔑しないって言ってくれた。オタクの趣味のこと、認めてくれた」 <8FA0> 桐乃「…………すっごく、嬉しかった」 <8FE0> 京介「桐乃?」 <9010> 桐乃「なに、その顔? あたしが感謝するの、そんなに変?」 <9060> 京介「い、いや……そうじゃなくて……」 <90A0> 京介「そういう風に言われる日が来ると思ってなかったから、ちょっと……意外っつーか、嬉しくて……」 <9120> 桐乃「……ばか」 <9150> 桐乃「話、続けるから」 <9180> 京介「ああ……」 <91B0> 桐乃「オタク趣味がバレたあと、あたしはあんたに人生相談した」 <9200> 桐乃「嫌そうな顔してたけど、それでも……あたしの悩み、ちゃんと聞いてくれた」 <9260> 京介「あのときはまだおまえの兄貴だったし、それが当然だと思ってたんだよ」 <9320> 桐乃「……そっか。兄貴として、か……」 <9360> 桐乃「だけど、それもあたしにとってはすごい嬉しいことだったの」 <93C0> 桐乃「あたしのこと、考えてくれてる。あたしのこと、わかってくれようとしてくれてる」 <9430> 桐乃「そう思ったら、止まらなかった。一回にするつもりだった人生相談も、一回じゃ済まなくなった」 <94B0> 桐乃「優しくしてくれるのが嬉しくて、今が夢なんじゃないかって思うくらい幸せだった」 <9520> 桐乃「どんな無茶言ったって、あたしの味方でいてくれたよね。あたしのこと、嫌いなのにさ……」 <9590> 京介「それは……おまえも、だろ?」 <95D0> 桐乃「あたしは……」 <9600> 桐乃「……あたしは違う」 <9630> 京介「え……?」 <9660> 桐乃「あたしは……違うの……」 <96A0> 桐乃「いままで隠してきたけど……もうだめ……だめなの……」 <96F0> 桐乃「あ、あたし……あたし、は……」 <9730> 桐乃「ずっと、ずっと、あんたのこと……好きだったの」 <9780> 桐乃「……言っとくけど、これはうそじゃないからね」 <9830> 桐乃「…………京介、大好き」 <9BD0> オプションに『ツーショット弾幕』が追加されました <9C50> O.R.E.『裏の顔』は_『はじめから』を選択すると引き継いで使用できます