Suigetsu:14 B01.txt
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雪さん復活 雪「透矢さん、透矢さん…」 ああ…夢が、覚めたか…? 脇キャラ『透矢、雪は…』 いや、まだだ… 何度も聞かされたセリフ。 脇キャラ『雪は、おまえが守れ』 透矢『うん…』 いつからだろう。 僕が、あなたに守られるばかりになってしまったのは。 ・ ・ ・ 思えば、僕はあの日、あなたの何を守ろうとしていたんだ… ねえ、雪さん? 雪「透矢さん、透矢さん…」 透矢「あ…」 雪「おはようございます。こんなに、汗をかかれて…大丈夫ですか?」 透矢「あれ…雪さんの…ふとん?」 雪「昨晩は雪の看病をしてくださって…そのまま、眠ってしまわれたんですね。起きたら、透矢さんの顔が目の前にあるんですもの。びっくりしました」 透矢「そう。体調、良くなったの?」 雪「おかげさまで。それより、透矢さんこそ大丈夫ですか?」 透矢「僕のは単なる夢だから。どれどれ…」 こつん。 透矢「ホントだ。でも、病み上がりだから、今日は無理しないほうがいいよ」 雪「どうしましょう。無理をして体調をくずせば、透矢さんに優しくしていただけることがわかってしまいましたから…」 透矢「あのね…」 雪「ふふ…」 すっかりいつもの雪さんだ。 にやつくばかりの僕に、雪さんは真顔になって、 雪「思い出して、いただけたんですね?」 透矢「夢を見たんだ。それが記憶なのかどうかはわからないけど、タイミングが良かったから…」 雪「詳しく聞かせていただけませんか?」 透矢「それほど覚えてはいないんだ。僕は雪さんのことを、雪ちゃんって呼んでた。それで小さい時なんだと思った。あと、男の人の声で雪を守れとかどうとか…」 雪「お父様ではないでしょうか?」 透矢「…ああ、雪って呼びすてにしてたし、そうかも。それで、あとはママ…母さんが出てきて、僕におまじないしてくれた」 雪「キスの、おまじないですか?」 透矢「う、うん」 きのうのことで、何か言われるかと思ったけど、雪さんはわずかに目を伏せ、ほほを染めただけだった。 普段の雪さんと違う、いじらしい態度がよけいに恥ずかしさをあおる。 雪「海に行って良かったです。本当に、いいことばかりで…」 透矢「そうだね、雪さんが苦しい思いをしたのだけ抜かせば、そうかもしれない。僕もいろいろわかったから」 雪「記憶も、戻られましたしね」 透矢「…うん」 雪「? あの、何か…」 透矢「僕は、どうして、雪ちゃんって呼ばなくなったんだろう?」 雪「え?」 透矢「どうして一緒にお風呂に入ったり、寝たりできなくなったんだろう」 雪「それは…いつからか。透矢さんが恥ずかしかったんじゃありませんか?」 透矢「どうして恥ずかしいんだろう。どうしてご主人様で、メイドさんなんだろう」 雪「……」 透矢「ごめん。ちょっと嫌になったんだ。きっと昔の僕のほうが、雪さんのこと笑わせてあげられたから」 雪「そんなことありません…ありませんからね?」 また、悲しそうな顔をさせた。 僕が守るべきだったもの。 それは、彼女の笑顔だったのかもしれない。 根拠もなく、そんなことを考えた。 にやつくばかりの僕に、雪さんは真顔になって、 雪「透矢さん、おかげさまで、雪はこの通り元気になることができました。あとのことは雪に任せて、少しお休みになってください」 透矢「…そうさせてもらおうかな」 無理な体勢で寝ていたせいか、体の節々が痛かった。 あまり寝られなかったし、正直ちょっとだけ休みたい気分だ。 透矢「でもね、無理しちゃ駄目だよ」 雪「わかっています。メイドさんは、ご主人様の気持ちも考えないといけないんですよね…」 透矢「え? ぁー…ああっ!」 『メイドさんなら、ご主人様の気持ちも、考えなきゃ駄目だよ?』 きのう、僕が眠っている雪さんに言ったセリフだ。 透矢「お…起きてた?」 雪「ふふ、夢だとは思いましたけど…覚めてしまうと困るので、おとなしくしていたんです」 そう言って、きのう僕がさすった辺りを自分で撫で始めた。 恥ずかしすぎる… 雪「だますような形になってしまって、すみませんでした」 透矢「ホントだよ…まったく」 雪「ふふ。今だから白状しますけど、雪、病気の時は、よくタヌキ寝入りをしていたんです」 透矢「雪さんが、タヌキ寝入りぃ?」 雪「だって、体調の悪い時ですとか、寝ている時ですとか…特に優しくしていただけるんですもの。鏡を見て、苦しそうな顔の練習までしたんですよ」 透矢「っはは、鏡の前で練習って」 想像して笑った。 雪「もう…また練習したほうが良いかもしれませんね」 透矢「しなくていいってば」 雪さんがちょっとでも苦しそうにしてたら、たとえお芝居だってわかっても、僕は甘やかしてしまう気がしたから。 ずるいんだよな、雪さんの甘え方は。 雪「ふふ、冗談ですよ。引き止めてしまってすみませんでした。おやすみなさい、透矢さん…」 透矢「わっ…」 ちゅっ…なでなで… おねんねのおまじないをして、雪さんは幸せそうに笑った。 雪「わかっています。ですから、透矢さんは安心してお休み下さい」 透矢「うん、それじゃあ…おやすみ」